好きな人のお母様に恋心がバレました
第4話:最初の一歩は兵法の如く



季節はそろそろ梅雨があける6月下旬。
まだハッキリとしない曇り空も、たまに晴れ間が覗いて、初夏の陽気に近付きつつある今日この頃。



「すまん、また美味くて食いすぎてしまった」



「ちょ、須藤先輩!?
これで何度目ですか!!私が朝霞先輩にあげる前にクッキー食い潰すの!!」



「食い潰してはいない。ほら、あと2枚」



「それを世間では食い潰すって言うんです!私100枚は焼いてきたのにー!」



今日も今日とて休憩室には女子社員二人の声が響いていた。



「なんだよう、ケチくさいなあ」



「昼飯ケチって私のクッキー98枚も食べる須藤先輩には敵いませんけど」



「怒るなって、帰りリヨンのケーキセット奢るから」



「連日そのせいで私は太り気味なのですがー!!」



ちなみにリヨンとはこの前、早百合さんとも行ったこの会社の一階にある高級喫茶店だ。
トホホ、とあと2枚しか残っていないクッキーをもうあげることもできないのでポリポリと囓る。



目の前にいるのは部署内で一番席の近い女子社員である須藤暦(こよみ)先輩だ。確か歳は29歳。これでも付き合って10年以上経つ彼氏がいるのだから世の中間違っている。見た目は黒髪ショートを緩くカールさせた少し釣り目のクール系美人なのに、性格と味覚に難がある。とりあえず極度の甘党だとだけ言っておく。



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