好きな人のお母様に恋心がバレました
「あ、あの……」
そろそろ私はお暇します、と言いかけたところで、見知った顔ーー早百合さんがこちらに向かってくるのが見えて。
慌てて私は頭を下げる。
「あら、依ちゃん!」
すると私を見た早百合さんも嬉しそうに駆け寄ってきた。
「瑞樹が二人を見つけたの?」
「うん。
なんか静兄、彼女といたよ」
「あら?
依ちゃん彼女になったの?」
「え、いやっ、違いますっ」
全ての事情を知っているはずの早百合さんは悪戯っぽく笑って、それに私が反論する。
隣の先輩はただ溜め息を吐くだけだった。
「もう、いいだろ。
行こう、宮戸さん、長くなってもあれだし」
「あっ、えっと…」
チラリと早百合さんに視線を向けると、彼女は軽くウィンクをして。
またね、と口をパクパクさせた。
それに私もグッとガッツポーズで返して、先に歩き出した先輩の後を追った。