好きな人のお母様に恋心がバレました



コツンと頭を小突かれて、私はそれらしいことを口にする。



「せっかくの休日に私だけに時間割いてもらうのもなあ、って思って。
先輩にお茶とか夕飯とか付き合わせて、あれ以上私に余計な気を遣って欲しくなかったというか」



自分でもわかっている。
これは単なる言い訳で、本当は勇気がなかったのだ。



グイグイ行かない方が印象がいいんじゃないかとか、そんなに早く行動しなくてもだとか、自分は今日十分頑張ったとか。
私はきっとそんな風に自分が積極的にならなくていい理由を探して、先輩に断られるかもしれないことを恐れて、あれ以上攻めることなんて出来無かったのだ。



「あのな、そんな余裕かましてるとそのうち朝霞くんにもほんとに良い人が現れてしまうぞ」



…ーー余裕をかましてる。



その言葉にハッとする。
そういうつもりはなかったはずだけれど……そう、なのだろうか。
ずっとこのままで居られるなんて、甘ちゃんなことを無意識に私は考えていたのだろうか。




「朝霞くんは恋愛に対して自分から行くタイプじゃないけど、雰囲気は悪くないし、仕事もそつなくこなすしな。いつお前のほかに彼を好きになる子が現れても不思議じゃないぞ。
そうなってからだと遅いんだからな」



そして須藤先輩は、アタシは忠告したからなー、と言って。
その後その発言は、言霊の存在を裏付けるように現実のものとなった。



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