好きな人のお母様に恋心がバレました
朝霞先輩を探すも、どうやら席にはいないみたいだった。
ここにいないということはトイレか給湯室だろう。
そう思って一度部署を出て、給湯室を覗くと案の定そこに先輩の姿があった。
シュンシュンとお湯の湧く音と、紙コップを用意する音、換気扇の音。
そのどれもが、先輩がここに居るというだけで特別なものになる。
声をかけるまで、もう少し先輩の横顔を見ていたいと思うのは、好きだからだ。
先輩がどうしようもなく、好きだからだ。
先輩のどこが好き、なんて不粋な質問だと思う。
きっかけなんて、あの飲み会の夜、隣の席でくだらない事で笑いあえたからってだけだ。
そこからいろんな朝霞先輩を知って、どんどん好きになって、
それはきっとこれからもずっとそうだ。
綺麗な朝霞先輩だから、好き、なんじゃない。
朝霞先輩だから好きで、それに、綺麗なとこも優しいとこも不器用なとこもみんな好きだって。そんな風に好きな部分が一個一個足されていくんだ。
もし女豹が言うように、清く正しい先輩が好きだったとして。
これからもし先輩が、狡くて、汚くて、間違ってて、そんな一面を私に見せたとして。
私は先輩を嫌いになるだろうか。
「あれ、そこにいたの。宮戸さん」
振り返った先輩は、にこりと柔く笑った。
その、声に姿に
胸がきゅうっとなった。