好きな人のお母様に恋心がバレました

『……いないけど』



本当だろうか。
ならなんで、いま目を逸らしたんだろう。



『入社してから誰かとお付き合いしました?』



『いや』



『大学の時、彼女とか』



『いなかったよ。知ってるでしょ、うちの大学』



そう言われて、朝霞先輩の出身大学を思い出して合点する。
たしかバリバリの偏差値の高い理系大学で、女子の少なさに定評のあるところだ。



そこで私はすこし首を傾げた。



これは。もしかすると。



『あの、高校も確か……』



『男子校だけど。中高エスカレーター式の』



『………あの、えっと』



小学校のときは、と口にしかけて止めた。



朝霞先輩がさっき目を逸らした理由がなんとなくわかったからだ。


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