好きな人のお母様に恋心がバレました
「コーヒー飲む?」
「えっと、じゃあ、お願いします」
「了解。そこ座りな、いま淹れるから」
給湯室は狭い。細長い部屋には2つだけ丸椅子が置かれていて、あとは前に屋上で飲んだ時に使った紙皿や紙コップだとかが雑多に置かれている。
「はい、熱いから気を付けて。
砂糖はスプーンひと匙ともう半分、入れといたよ」
「ありがとうございます。……ん?
なんで私がいつも入れてる分、知ってるんですか」
「さて、なんでだと思う?」
くすっと笑って朝霞先輩は自分は椅子には座らずに壁にもたれたままコーヒーに口を付けた。
そんな言い方は、ずるい。
「わ、私も知ってますよ、先輩は砂糖入れないって」
「それは宮戸さんが俺の後輩だからね、先輩のはみんな知ってるでしょ?」
「うぅ、で、でもコーヒーよりココアが好きなのも知ってますよ!それにさらにミルクを入れるのも」
「あはは、えらいえらい」
軽くいなされて大人しくコーヒーを啜る。
たったこれだけの会話で、私は嬉しくなってしまう。先輩が、好きで好きで堪らなくなってしまう。