好きな人のお母様に恋心がバレました
「あの、映画のお礼、持ってきました」
おずおずと持っていた紙袋の中からクッキーを取り出す。
「え、本当?
わざわざ良かったのに、ありがとうね」
そう言って彼は受け取ると、さっそく袋を開け始めた。
「今食べていい?
コーヒーに合いそうだよね」
「あ、はい。大丈夫です、お口に合うといいんですが」
私が言い終わる前に彼はパクっとひとつ口に放り込む。
ああ、私の作ったものが朝霞先輩の胃袋の中に入って小腸で吸収されて血となり肉となっ……
って私は一体何を考えてるんだ。
「わ、うま」
それだけ言うと、先輩はもう一枚ポリポリと食べてしまう。
「本当ですか?!」
「うん、すごい美味しいよ。なんだか懐かしい味」
………。
早百合さん直伝の味だからなあ。多分先輩も食べたことあるんだろうなあ。そりゃ懐かしいよなあ。
「え、えへ」
曖昧に微笑んで、誤魔化すように私は持っていたコーヒーを飲み干した。
そこにちょうど塩谷さんと女豹がやってくる。
「なんだお前ら。まだ帰らんのか」
「あっ、朝霞さぁーん」
(げ、よりによってこの二人……)
全く歓迎していない人たちの登場に私ばかりでなく朝霞先輩もビクリと肩を震わせた。