好きな人のお母様に恋心がバレました
疲れている原因があるとするならば、それはその一点のみに尽きるだろう。
女豹が来て早5日。
朝霞先輩は目に見えて生気を失っていた。いや、吸い取られていると言った方が適切かもしれない。
昨日折を見てコーヒーを差し入れた時のことを思い出す。
『朝霞先輩、お疲れ様です』
ちょうど3時を過ぎた頃だったので、コーヒーに小さなチョコレートもつけておいた。
するといつもだったら爽やかに、ありがとう宮戸さんと微笑んでくれるはずなのに、なんだか様子がおかしい。
コーヒーをそっと先輩の机に置いた瞬間、コーヒーの取っ手を持っていた私の手は、朝霞先輩の右手によってギュ、と握られた。
『え』
『ごめん宮戸さん、……俺、もう限界かもしれない』
この展開は知っている。
幾度となく少女漫画やレディコミを読み込んで来た私だから分かる。
“もう限界”ーーこの台詞の後決まって主人公は唇を奪われそして誰もいないオフィスの暗がりの中あんなことやこんなことをーー!!
『せ、先輩ダメですよこんな人がいっぱいいる所じゃーー!』
『栄兵さんの指導係、俺じゃもう限界だ!!
宮戸さんかもしくは塩谷に頼みたいんだけどどうかな!?』
『へ?』