好きな人のお母様に恋心がバレました
「いやいやどうせいつものメンバーでやる飲み会だし気合い入れる必要なんて無いですよー?」
「まあ、依ちゃんダメよそんなんじゃあ」
そう言って早百合さんは茶目っ気たっぷりにウインクしてくださる。
そのあまりの可愛らしさに一人で悶える。
なんだこの可愛い40代は!
「男なんてギャップに弱いんだから、ここでオシャレしないでどうするの?
せっかくここに『私』がいるのに」
「………え?」
どういうことだろう?と首をかしげると、
早百合さんは取って置きのナイショ話でもするように声を潜めてこう言った。
「………私ね、これでもメイクアップアーティストなのよ。それも、売れっ子のね」
「めいくあっぷあーてすと?ですと?」
「そう、轟 良子とか知らない?彼女の専属なのよ、私」
その名前に私は目を見開く。
何を隠そう、その名前の女性は超大物芸能人だったからである。
「だから、メイク、やってあげる。チャチャっとね!」
そういって、まるで魔法の杖を振るようにスイーっと人差し指を動かした早百合さんが、まるで本当に魔法使いみたいで。
「私に魔法をかけてください!」
ガタンと席を立ってそんな恥ずかしいことを言った私に、彼女はモチロンよ、とそこにあったスティックシュガーで今度こそ魔法の杖のように一振りさせた。