好きな人のお母様に恋心がバレました
その後、残り20分しかない昼休みを私は早百合さんとロビーの化粧室にこもって過ごすこととなった。
私と早百合さんの化粧道具を駆使して、流れるように彼女の手は私の顔を滑っていく。
普段の化粧時間は10分もかからないど素人の私の化粧は、研究をしたこともないし、なんなら学生時代から同じまんまだ。
そもそも家族内に女姉妹がいなかったのも原因かもしれないけれど。
「いま、こういう色が流行っててねーー」
「ふおー…」
だから、プロの技とはなんて鮮やかなんだろうとため息しかでない。
そして今まで私はなんとおざなりなメイクをしてきたのだろう。
「……よし、こんなもんでしょう。ギリギリ間に合ったかしら」
まるで炊きたての高級米のようなツヤツヤしたお肌と、普段からは考えられないほどパッチリくっきりした目元。
うるうるした唇はなんだかもう私が鏡にチューしてしまいたいほどのプルップルの仕上がりで。
「あなたが神か………」
ボソッと呟いた台詞に、早百合さんは鏡越しに満足げに笑った。