好きな人のお母様に恋心がバレました
「どしたの?すごい、印象違うけど」
詰問に近い声音でそっと問われて、
何かいけないことでもしてしまった気分になる。
「えっと、知り合いにお昼休みにメイクしてもらったんです」
もしかして、先輩は気に入らなかっただろうか。
だからそんなに、無機質な声で私に問うのだろうか。
(で、でも会社のみんなには好評だったし!そこまで濃いメイクでもないはずだし!)
そう自分自身に言い聞かせる。
けれど先輩は、良い顔をしない。
「……昼休みからずっとそのメイクってこと?」
「は、はい」
「俺がいない間に
総務のみんなとも会ったってことだよね」
「??
まあ、そうなりますね……」
「……へえ」
そこでエレベーターの扉が静かに開く。
どうやら一階に着いたらしい。
ずっとこうしているのもアレなので、
降りようとするけれど、先輩は動こうとしない。
「あの、先輩……?」
一階に着きましたけど、と視線で訴えるも、彼は扉を振り向くこともなく。
それどころか扉は再び閉じてしまい、密室にまた、ふたりきり。