好きな人のお母様に恋心がバレました
第7話:汚くても狡くても冷たくても意地悪でも
本日の飲み会会場は、会社から五分の距離でいつもお世話になる大人数も入れる居酒屋『比内地通り(ひないじどおり)』だ。
焼き鳥に定評のあるここは、女将さんがうちの会社の社長の元嫁の元カレの浮気相手から略奪し返した前カノのその前のーーだとかなんだかそこらへんは掘り返すと本当にめんどくさくなるので突っ込んだことはないけれど、なんとなく古くからお付き合いさせてもらってるお店だ。
店内は、THE居酒屋といった佇まいで、手書きのメニューと水着のお姉ちゃんがビールを持って微笑んでいるポスターがそこかしこに貼られている。
席はカウンターとお座敷が分かれていて、今日はお座敷を貸し切った。
現在時刻は5時20分。
店内にはまだ、私しかいない。
「宮戸さん、これでいいかい?」
恰幅の良い女将さんが、座敷に座っている私に紙とハサミを渡してくれる。
「はい、ありがとうございます!」
うちの部署では飲み会のときはいつもクジを作って、座る席はランダムである。
そのクジを作るのも地味に幹事の仕事なので面倒臭い。
チョキチョキとハサミを動かして黙々とクジを作っていく。
ぷぅーん、と香ばしい焼き鳥の匂いがして自然とお腹が鳴った。
……そう、いくら悲しくて胸がつっかえていたって、腹は減るのだから世話ない。
こんなときくらい可愛らしく食欲が無くなってもいいのに、あたし。