好きな人のお母様に恋心がバレました
「女豹、言ってましたよね。
私は何に恋してるんだって。優しくてお綺麗な朝霞さんだって言うなら貰うって」
「ああ、そんなこと言ってたっけか」
「なんだか、分かんなくなっちゃって。
朝霞先輩にちょっと思ってたイメージと違うことを言われて、私はそれだけでいま、動揺してるんです。
……女豹の言った通りだったのかもしれない。
私は、朝霞先輩に何かをきっと望んでたんです。偉そうに私は、先輩に優しさだけを望んでた。だとしたら、私は先輩に恋してるんじゃなくて、《優しい誰か》だったら誰でも良かったのかも知れない……」
今さらながら、女豹は全てを見越してたのかもしれないと思う。
浅はかな私の、薄っぺらい恋心。
それが先輩にいかに失礼か。
勝手に何かを期待して、
勝手に裏切られた気分になってーー
まるで中学生が、校内一のイケメンに勝手に恋して、理想像を作り上げて、それが少し思ってたのと違ったら、さっさと次に行くように。
私の恋心だってもしかしたらその程度ーー…
「ストップ!」
須藤先輩の声にハッと顔を上げる。
先輩は小難しい顔をしていた。
いつもの死んだ魚の目ではなく、そこには複雑な色が宿っていて、この人そういえば人間だったと思い至る。