好きな人のお母様に恋心がバレました


とほほ、と小さなため息をついて
目の前の酔っ払い、もとい朝霞先輩を見つめる。



でもいま、先輩の心をちゃんと聞けてよかった、と思う。



先輩が教えてくれた、彼自身の汚くて狡くて冷たくて意地悪なとこだって
まだまだほんの一握りしか知らないけれど。



そうなってしまう理由を一個一個聞いていけば
また違った面が見えてくる。
先輩が、ただ私を傷付ける為にあんなことを言ったのではない、と今なら分かるのだから。



一部分だけ見てその人を判断することは
やっぱりすごく勿体無いことなんだな。



こうやって誰かを深く知りたい、知っていくってことが、
恋に恋してるんじゃなくて、その人に恋してるってことなのかもしれない。



「先輩」



「なに?」



「私、もっと頑張りますね!」



そして自分にもっと自信が持てたら、勇気が出たら、私はあなたに想いを伝えたいと思う。



そうして飲み会の夜は、私の密かな決意と共に更けていったのだった。


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