好きな人のお母様に恋心がバレました
閑話休題〜須藤暦の帰宅後の一杯〜
「ただいまー」
早い時間に始まった栄兵の歓迎会は、二次会に行かなかったため9時という早い時間に終わった。
そこから直接家に帰ってきたので、まだギリギリといえど9時台だ。
「おかえり、暦。風呂沸かしといたよ」
ひょこっと居間から顔を出したのは、高校のときから付き合っている恋人だった。
「すまん、助かる。……って洗濯までしてくれたのか、いつも悪いなぁ」
「自分の洗濯のついでだよ」
気にしないで、という意思を言外に含ませた優しい言葉。
全く、なんでこんな出来た男が自分と付き合ってくれてるのだろう、と目の前でひらひらとクーラーの風で揺れる自分のパンツを見つめながら思う。
付き合ってからもう10年以上経つ。
同棲をはじめてから5年、……プロポーズを受けてからはもう2年がたっていた。
パソコンに向かう、その小綺麗な横顔を見るといつも安心する。
ずっと一緒にいたいと思うのは、後にも先にもこの人しかいないと知っている。
けれどもう年単位で結婚を保留しているのは、私にとっては最善でも、この人にとって自分が最善ではないとーーそれも知っているからなのだ。
それでも離れがたくて、こんな歳になってまでだらだらと高校生から変わらない付き合いを続けている。
ストッキングと上着を脱ぐと、
冷蔵庫から取り出したビールを開ける。プシュッと爽快な音を聞きながらソファに転がった。
「また飲んでる」
柔らかく笑う声につられて笑う。
「仕方ないだろ。今日の飲み会はなかなか楽しいことが多くてな。
それを肴にもう一杯って気分なんだ」