好きな人のお母様に恋心がバレました
『うちの可愛いのに、お前なんかしたろ』
イイ感じに酔い始めてきた朝霞くんに、折を見てそう尋ねた。
可愛いの、とは一応宮戸のことである。いつもはそこそこ可愛い宮戸だが、今日は段違いに可愛い。これも化粧のなせる技か、と唸ってしまうのは少し宮戸に失礼だとは思うけれど。
遠目にチラリと宮戸を見ると相変わらず塩谷に絡まれ続けている。
すると机に突っ伏していた朝霞くんが、ジトリとこちらを見上げた。
いつだったか、宮戸が『朝霞先輩の上目遣いはヤバイんです!マジキュンものです!』と力説していたことをふと思い出すが、実際に上目遣いされても全く心が動かないので恋ってすごいなあと思う。
しばらくの沈黙の後、朝霞くんは拗ねた子供のように口を開いた。
『……言いましたよ?傷つけること。でも後悔してない。
……宮戸さんが誰より可愛いって、なんで俺以外にバレなきゃなんないんだ。……ったく、誰だよ化粧なんてしたの……』
くそっ、と悪態をついて酒を煽る姿は珍しくて面白い。
(しかも何が面白いって、たぶんその化粧したの、お前の母親だ)
宮戸のデスクにあるスケジュール表に“早百合さんとランチ”と彼女が書いていたのは一昨日のことだったか。
どこの落語のオチだよ、と笑いが止まらなくなりそうである。