好きな人のお母様に恋心がバレました


「……ということがあった」



説明しているうちに楽しくなってしまって、2本目のビールに手が伸びかける。
すると恋人ーー杉浦皐月(すぎうらさつき)が、その缶ビールをスッと私の手元から抜いた。



「皐月のケチ……」



チッと舌打ちすると、



「舌打ちするのはこの口?
もう飲んじゃダメだ。……飲み過ぎて感度まで落ちたら、面白くない」



そのまま、私が寝転がっていたソファに、目の前の男は全体重をかけてくる。
目の前に近づく顔は、小綺麗だけど、さっきよりも明らかに獰猛かつ色っぽいもので、うわあマジかと心の中だけで叫ぶ。



「……や、まだ私シャワー入ってないし」



「問題ある?」



「あるだろ!つーか早い!ペース早い!ケツ触るな!」



「煩い口は塞ぎまーす」



「んんんん」



なんだかんだでいつもコイツのペースに乗せられる。
ーーそう、特に夜は。



「……何考えてるの、暦。ダメだよ、集中しなきゃ許さない」




はい、暗転。



飲み終わった缶ビールの空が、無様にテーブルに転がっているのが目の端に見えた。
私の帰宅後の一杯という安息はこの男によっていつも最後にぶっ壊される。



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