ここに君がいたこと
一章 純白の世界
*三木 薫*
目が覚めると飛び込んでくる、真っ白な天井。
「薫っ!?」
それから飛び込んでくる、澄んだ綺麗な声。
そちらに顔を向けると、30代くらいの綺麗な女性。
「薫っ」
その人が、あたしの手を握る。
薫、薫、と、その人は何度も口にする。
なんだろう、とボンヤリやり思いながら、その部屋を見渡す。
………病室?
白い壁にベッド。
自分がいるのは、シミ一つない白いシーツのベッド。
………病室だ。
なんで?
「薫、どこか痛いところない?」
痛いところ?
考えてみると、頭と、握られているのと反対側の手が痛かった。
けれど、今はそんなことよりも。
「………あなた、誰ですか?」
知らない人に手を握られているのが、不思議でたまらなかった。
「………え?」
頭の片隅で、恋愛ドラマや小説でよく出てくるワードがチラつく。
記憶喪失。