ここに君がいたこと
「薫、手と頭大丈夫?」






 頭大丈夫、って言うと、なんだか相当馬鹿になったような気分だ。






 「はい。大丈夫です」






 何気なく答えると、大爆笑される。






 「敬語なんて使わないでよ。わたしは三木楓。大学1年生のあなたの姉。ほら、普通に話しなさい」






 姉だ、といわれても、記憶がないから実感が湧かない。






 「うん…ありがとう」






 そう言うと、お姉ちゃん、は、ニッコリと笑う。






 「自分のこともわからないんだよね?」
 「うん」






 あたしの名前はきっと薫、で、姉の名字が三木なら、きっとわたしは三木薫、という名前なんだろうけど。






 「三木薫、高校1年生。10月16日生まれだから、まだ15歳。あ、ちなみに今は5月ね」






 やっぱり、三木薫、があたしの名前。



 高校1年生なんだ。



 へぇ………。






 「この怪我は?事故?」






 尋ねると、お姉ちゃんは困ったように微笑む。






 「車に轢かれたんだって。薫、10日間眠ってたんだよ?」


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