背徳の薔薇



「今日、千夏、なんかいい匂いがした」

腕の中の千夏に顔を近づけ、いたずらにそっと耳を噛んだ。

「やだ」

と言って、避けながらも千夏はくすくすと笑い、僕を見上げた。

「ローズベーゼよ」

「ローズベーゼ?」

「そう。男をその気にさせる香水」

そう言って千夏はふふっと笑った。

「そんなのどこで見つけてきたの」

「こんなの誰だって知ってるよ。雑誌でけっこう見かけるもん」

「そうなんだ」

「そうよ。薔薇の接吻よ。今日の潤はこの香りに負けたのかもね」

千夏は笑みを浮かべ、そっと僕にキスをした。

僕は彼女の頬をそっと包み。

「そうかもね。でも、薔薇には棘があるから気をつけないと」

にやりとして千夏を見ると、

「この薔薇に棘はないから、安心して」

と千夏は楽しそうに笑った。
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