西瓜怪談
西瓜を買った話
会社帰りに車で通る道の端に、いつも開いている青果店がある。
こじんまりとした、いかにも個人経営らしい小さな店だが、いつ見ても灯りが点いていた。
いつも車で通り過ぎるだけだが、店に客が入るところは見たことがなく、潰れないのが不思議な店だった。
ーーとは言え、潰れそうなのに潰れない店というのはよくあるものだ。
一体全体どういう仕組みか知らないが、うちの会社に見習って欲しいものだ。
今月も不景気とやらのお陰で、同期が二人もリストラ宣告を受けている。
まったくもって、生きた心地がしない。
ーーそんな会社と、養うべき家族のいる家を往復する毎日の中、いつも世間の波など気にもとめない様子で佇んでいるーー二十四時間年中無休の青果店が、なんとなく気になり始めていた。