西瓜怪談
西瓜を買った話


 会社帰りに車で通る道の端に、いつも開いている青果店がある。

 こじんまりとした、いかにも個人経営らしい小さな店だが、いつ見ても灯りが点いていた。

 いつも車で通り過ぎるだけだが、店に客が入るところは見たことがなく、潰れないのが不思議な店だった。

 ーーとは言え、潰れそうなのに潰れない店というのはよくあるものだ。

 一体全体どういう仕組みか知らないが、うちの会社に見習って欲しいものだ。

 今月も不景気とやらのお陰で、同期が二人もリストラ宣告を受けている。

 まったくもって、生きた心地がしない。

 ーーそんな会社と、養うべき家族のいる家を往復する毎日の中、いつも世間の波など気にもとめない様子で佇んでいるーー二十四時間年中無休の青果店が、なんとなく気になり始めていた。

< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop