この身の程知らずが。
scene2*真顔で見下してこないでください

ふぁー。

疲れましたよ。ほんとに。

SHR五分前のチャイムのお陰によって私は解放された。

カバンを持ったまま、フラフラと自分の席を目指す。

女子は嫌いだ。

何故、女子と云う生き物は

ああまでして五月蝿いのか。

しかも、非常にどーでもいい会話を

すんごいテンションで繰り広げる。

なんてコミュニケーション能力の高い人種なのだろう。

つくづく、尊敬。

私には、解せぬ。

「おっぷ…!」

そんな事を考えていると何かにぶつかった。

反射でキツく閉じた目を開くと

目の前に黒が広がっていた。

優しくて安心するような匂いが一瞬、鼻についた。

とっさに顔を上げると、胸元があった。

第二ボタンが鈍く光った。

そして恐る恐る、さらに上を見上げた。

「……ひぃ」

恐ろしいほどの真顔がそこにはあった。

まるで大仏様に見下ろされている気分だ。

でけぇ………。

口を開いて、唖然そのものを浮かべた。




「あ…ごめん…ごめんなさい…」

そして思い出したように謝った。

「……………」

目の前の大仏は眉一つ動かさず

何事もなかったように、そのまま横を通りすぎていった。

いや、なんか言えよ…。

あれは、絶対変な奴だ…。

関わらないようにしよう。

その大男は、早くも私の中で危険人物としてインプットされた。

SHRの始まるチャイムと同時に、私は席についた。
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