泣きたい夜に
綺麗な人…
それが彼の第一印象だった。





「さむ、い…」



この日は皮肉にもクリスマスイヴイヴってやつで、
明日は恋人たちのクリスマスイヴ。

カップルたちの興奮を高めるかのような雪。

寒いのも当然。



「とりあえず、涙拭きなよ」

「ありがとう…」

「元気出して。じゃあ」



あんなにかっこいいから、さそがしモテるんだろうな。

それに見知らぬ私にも優しくしてくれる。

絶対面倒だってわかってる。傍からみたら私は非常識な女。

泣くなら家でなけよ、分別のある大人ならって感じ。

それなのにわざわざハンカチ貸してくれて…


…って 、あ!返さなきゃじゃん!

しかもこれ、絶対彼女か誰かのハンカチでしょ!

ピンクの花のついた白ハンカチなんて。




「あ、あの!」



小走りになって追いかけようとするけれど、
もう彼の後ろ姿は見えなくなってしまっていた。
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