ダメ男依存症候群 EXTRA

「……帰って」

 あたしは彼を睨みつけて言った。


「え……いや、ちょっと、待てよ、奈津美……」


「帰ってって言ってるの!」

 あたしは持っていた携帯を彼に投げつけた。


 彼は素早く反応し、胸元で携帯をキャッチした。

 それだけのことでも、あたしの癇に障った。



「出てって!」

 今度は鞄を投げつけた。今度は体に命中した。


「ちょ……奈津美、落ち着けよ」


 落ち着け……? 今更何言ってんの?


「出てってってば! 今すぐ!」

 床に落ちた彼の鞄と鞄の中身を拾って彼に押し付け、玄関のほうに押していった。

 途中に脱衣所で彼が脱いだ服を取り、そのまま玄関に押しやる。


「えっ……待てって……おい……」

 彼は慌てた様子で抵抗する。

 でも、あたしは構わず押し続けた。

 彼は後ろ向きになっているせいか、押されるままになっていた。


 玄関まで押しやって、あたしはすぐにドアを開け、最後に力強く彼を押した。

 そして玄関にあった彼の靴を外に投げ捨てた。


 彼はまさに、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。


「さよなら。もう二度と連絡しないで。あと、二度とあたしの前に現れないで」

 そう言い放って、ドアを閉めた。


「ちょっと、おい、奈津美……」

 すぐにドアを叩く音がした。


「さっさとどっか行ってよ! そんなかっこで騒がれたら人がくるじゃない!」

 あたしが言うと、向こうは押し黙った。


「今後一切あたしに関わらないで。もし関わってきたら、奥さんにこのこと言うから」

 それだけ言って、あたしは部屋に戻った。


 ドアの向こうからは、もう何も言ってこなかった。



 もちろん、奥さんに言うとか、そんなことはハッタリだった。

 流石に、奥さんの連絡先を控えたりする余裕はなかったから。


 でもあたしは、それくらい言ってやらないと、やってられなかった。


 悔しくて悔しくて、仕方なかった。


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