ダメ男依存症候群 EXTRA
「あたしもね。変な夢見たよ」
「へぇ。どんな?」
旬があたしの方を向いた。
「……内緒」
一瞬言おうかと思ったけど、ぱっやりやめた。
「え、何で?」
「ふふっ。何でも」
夢の中で、旬が犬になってた、なんて、そんなことを言ったら、きっと旬は怒るから。
「えー。何だよ。何で笑ってんの? 気になるじゃん」
「気にしない、気にしない。大した夢じゃないから」
「ええー?」
旬は口を尖らせて、少しだけ不服そうにしていた。
そんな旬が愛おしくて、あたしは旬の身体を抱き締めた。
「え? 何? どしたの、今度は」
旬が驚いた声を出していた。
「ううん。何でもないよ……」
さっきまでのは、夢だったはずなのに、手のひらには、犬の毛並みの感触が残っているような気がした。
そして、今、この手に触れている旬の背中は、ちゃんとしたヒトの皮膚の感触だった。
全く違うはずなのに、不思議と同じような安心感があった。
旬に、夢の話をしなかったのは、もう一つ理由がある。
それは、夢の中のあたしが、夢の中でも、犬のシュンに依存していたから。
そのことを旬にいうのは、何だか気恥ずかしかったから。
旬が、あたしの額に唇をつけてきた。
顔をあげると、今度はほっぺたに口付ける。
そして、同じところを、ぺろりとなめられた。
あたしはその感触にビックリして目を見開いた。
「……何で舐めたの?」
「え、可愛かったからなんとなく」
旬のほうもキョトンして答えた。
「……もう……びっくりした」
びっくりしたのは本当だけれど、あたしは顔が緩むのを感じていた。
びっくりした。
旬に頬を舐められた感触が、驚くくらい、夢の中での感触に似ていた。
その瞬間に感じた、気持ちがふわっと軽くなるようなその感覚までも……