ダメ男依存症候群 EXTRA

「どう違うのよ。……大体、別に何でもいいじゃない、あたしが何着たって」

 もう奈津美は呆れ返っていた。

 旬が、奈津美の着る服装に何かを言ってくるなんて珍しい。

 いつもは、奈津美が何を着たって、可愛い可愛いというのに。(別に惚気ではないけれど)


「だって……初めて俺が選んだ服がさ、ナツにぴったり似合ってたから……嬉しいんだよ」


 照れ臭そうにはにかみなから、旬は続けた。


「俺、ナツにちゃんとしたプレゼントってあげたことないから……ていうか、あげれる金ないし。だから、今日初めてちゃんとあげれたような気がして……って、買ってあげたわけじゃないけどさ」


 今更だけれど、旬には本当に驚かされる。

 奈津美が思いもつかないことを考えている。

 そして何より、奈津美が思っている以上の思いを、旬は奈津美に向けている。


 言われなければ些細なほどのことなのに、気付いたら体中では受け取れないのではないかというほどの、そんな気持ちを……


「あれ、ナツ。顔赤い?」

 旬の声で、奈津美ははっと我に返った。


「べ、別に赤くなんかないわよ。旬、もうそろそろ時間なんじゃないの?」


「あ、そうだ! もう行かねえと」

 旬は思い出したように慌てだす。


「んじゃ行くな。バイト終わったら電話かメールする」


「うん。頑張ってね」


 そのまま手を振って別れ、旬は慌しくバイトに向かった。

 奈津美は、旬の背中が見えなくなるところまで見送って、コーポの中に入った。


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