ダメ男依存症候群 EXTRA
全く奈津美の言うことは無視されている。
しかしここで何か言うと旬が拗ねてしまいそうなので、奈津美は観念して口を開いた。
すると、旬がそっと匙を奈津美の口に差し入れた。
奈津美は口を閉じ、それを口の中に含み、旬が同じように引き抜く。
うわ……何か凄い恥ずかしい。
「ナツ、おいしい?」
旬は満足そうに笑いながら聞いてくる。
美味しいも何も、別に旬が作ったわけではないのに……
そう思いながら奈津美は口を動かした。
しかし、その動きが止まる。一先ず、体に害はないので飲み込んだ。
「ねえ、旬。これ、お塩とか入れてくれた?」
「え? 入れてないよ? ……え? これって、もう味ついてるやつじゃないの?」
旬はきょとんとした表情で奈津美と茶碗の中身を見比べた。
やっぱり。どうりで味がしないわけだ。
「白粥は大体味はついてないものなのよ。塩分調整が必要な人だっているから」
「へー。そうなんだ。……てことは、これ、塩入れた方が……」
「嬉しいかな。あたしは」
「だよな。ごめん、取ってくる」
旬は苦笑いしながら茶碗をローテーブルに置き、台所へと行った。
市販のもので、何の心配もいらないかと思ったら、こういうことで抜けてたりするのか。
でも、しょうがないか。
昨日、生まれて初めて風邪をひいたというような旬だ。
普段、一人で白粥を買うことなんてなかったはずだ。これくらいなら、大目に見てやろう。