ダメ男依存症候群 EXTRA


「ふいー。やっと終わった」

 ベランダから部屋の中に入りながら旬が言った。


「これって結構疲れるんだなー」

 首を回しながら旬が言う。


「お疲れ様。ありがとう、旬」


「何でありがとうなのー? 全部俺のなのに」


「……そういえばそうね」


 洗濯機を回したのは、全部、旬の服だ。

 旬が旬の家で旬の服を干していることに、何の問題もないはずなのに。


「ナツはいっつも全部やってくれるからなぁ」

 そんなことを呟きながら、旬はベッドの隣に座った。


「だから熱出ちゃったのかなあ……」

 旬が申し訳なさそうに言いながら、そっと奈津美の額を撫でた。


 それは違う。今日、熱を出してしまったのは、そんな理由じゃない。


 元はと言えば、旬が……


 いや、もうどうでもいい。


 何が原因にしろ、きっと旬は、同じようにしていただろうから。


 薬が効いてきたのだろうか。だんだん瞼が重くなってきた。


「ナツ、眠い?」

 覗きこんでくる旬のことがぼやける。

 奈津美は素直に頷いた。


「じゃあ、眠って? 何も気にしないで、ゆっくり休んで」

 優しい声で言いながら、旬は奈津美の頭を撫でた。


「うん……あ、旬。洗濯物、四時頃になったら取り込んでね。乾いてなかったら、部屋の中に干しといてね。あと……」


「もー。何も気にしないでって言ったとこじゃん」

 旬が口を尖らせて、奈津美の頬を指でぐりぐりと押した。


「大丈夫だよ。だから、安心して眠って」


「……うん」

 返事をすると、本当に睡魔が襲ってきて、そのまま眠りに落ちていった。


 遠くの方で、旬の「おやすみ」が聞こえたような気がした。


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