ダメ男依存症候群 EXTRA


 トクントクンと、優しい音が聞こえる。

 奈津美が目を覚ました。


 窓から入る光が、もう昼間のそれとは違って、オレンジ色になっていた。


 今、何時?


 奈津美が動こうとしたら、体に何か重いものが乗っていて、上手く動けなかった。


 そういえば、左側が暖かい。

 寝返りをうってみると、そこには、広い胸板があった。


 確認するまでもなく、旬だった。


 奈津美が寝ている間に、旬がベッドの中に入って、奈津美を横抱きにして、眠っていたようだった。


 体を無理矢理起こそうとしたら、意外と簡単に、旬の腕は奈津美の体から落ちた。

 よっぽどぐっすりと眠っているらしい。旬はピクともしない。


 奈津美は、ローテーブルにあった体温計を取り、腋に挟む。

 その間に部屋を見回して時間を見ると、もう五時を回っていた。

 随分長いこと眠っていた。


 ふとベランダを見ると、まだ洗濯物が干したままになっていた。

 旬は四時になる前にはもう寝ていたのだろうか。


 ベッドから降りて、台所に行ってみると、流しに奈津美の茶碗と匙が置いてあって、鍋などは、コンロにそのまま置いてあるだけだった。


 まあ、旬がやるとは思わなかったけど。


 ピピッ


 体温計が鳴ったので、取り出しながら、ベッドの方に戻る。


 熱は、三十六度八分。

 まだ微熱ではあるけれど、大分下がっていた。


 よかった。これなら明日からは普通に仕事に行けそうだ。


 奈津美は体温計をローテーブルに置いて、そっとベッドに腰掛けた。

 旬はさっきと変わらない様子で、ぐっすりだ。


 奈津美は、胸の下まで下がっている掛け布団を、きちんと肩まで掛け直した。


 慣れないことして、疲れたのかな。……っていっても、大したことしてないけど。


 でも、今日の旬は、奈津美のために一生懸命色んなことをしてくれた。


 それだけで十分だった。


「ありがとう、旬」

 奈津美は、旬が起きないようにそっと囁いた。



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