ダメ男依存症候群 EXTRA

 結局、奈津美はシャンパン、旬はジュースで乾杯をすることにする。

 奈津美のグラスには、透き通った金色のシャンパンが、旬のグラスには透明でピンク色のジュースが注がれた。


「カンパイ!」

 軽くグラスを当てると、奈津美はそのシャンパンをちびりと一口飲み、旬は一旦グラスを置いて、ローストチキンを手に取った。


「いっただっきまーす」

 元気よくそう言って、旬はチキンにかぶりついた。


 奈津美はグラスに口をつけたまま、それをドキドキしながら見守った。

 一口かじって旬は目を丸くした。


「……うまい!」


「ホント?」

 奈津美は胸を撫で下ろした。


「うん! すっげー久々に食べたけど、でも、今まで食べた中で一番うまい」

 そう言い、旬は更にチキンにかじりついた。


「よかった……ふふっ。旬、口の周りベタベタにしてる」

 子供みたいな旬に笑いながら、旬は奈津美はティッシュを一枚取った。


「いいよぉ。別に外じゃないし。まだ食べるから」


「外じゃなくても気にしてよ。グラスで飲むときに淵につくんだから」


 奈津美は旬の口元をぐいっと拭う。旬はされるがままになりがらも、またかじる。

 そしてそのたびにまた戻っていった。


 奈津美はふうっと小さくため息をついて、それを見た。

 旬は一本をぺろりと平らげると、口の周りと指先をを舐めて、グラスを手に取った。


 くいっと一気に飲み干すのを見て、奈津美は思わず注意しそうになるが、いつもと違って、今日はジュースなのだった。


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