ダメ男依存症候群 EXTRA
「嫌よ! そんなのっ……」
当たり前だが、奈津美はそんなつもりはない。
「照れちゃって~。かーわいい」
旬はニンマリと笑いながら、箱から一粒取り出して口に入れた。
「ちょっとっ……もう嫌だからね!」
奈津美はふいっとそっぽを向いてもう旬の行動には応じないと決め込んだ。
「照れない照れない~」
旬は反省の色など見せずに、口の中で軽くチョコレートを転がした。
……と、旬の表情が険しくなる。
「……何? どうしたの?」
突然表情を変えて固まった旬を見て、奈津美は不思議そうな顔をして旬の方を向いた。
「これ……コーヒーだ」
険しい表情のまま旬は言った。
「えっ……」
何でも食べる旬だが、コーヒーだけは大の苦手だ。旬の好きなチョコレートとの組み合わせでもダメらしい。
「ナツ~……これ、食えない~」
泣きそうな顔をしてそう訴えてくる。
「もー。だったら出したら?」
奈津美は旬に呆れながらティッシュを何枚か取り出して旬の口元に持っていく。
「ダメだよ、せっかくもらったやつなんだし……」
旬は渋い顔をしながらも首を横に振ってティッシュを拒否した。
「だって食べられないんでしょ? もう出したらいいじゃない」
「うう~……ナツ……」
旬は泣きそうな顔で奈津美のことを見つめる。
捨て犬のようなその顔を見て、奈津美は旬が何を求めているのか、何となくピンときてしまった。