ダメ男依存症候群 EXTRA

「しっ……知らないからね! 出せないんなら我慢して食べれば?」


 奈津美はまたそっぽを向いて、旬のことを無視しようとした。


「ナツ~……」

 旬は奈津美に哀願を向けることをやめない。


 チラッと奈津美が旬を見ると、本当に辛そうな顔をしている。


 ……見るんじゃなかった。


 結局、奈津美は旬に弱い。


「もうっ。これでもうしないからね!」

 奈津美は旬の方を向き、顔の高さを旬に合わせた。


「うう~……」

 旬がすがるように奈津美の腕を掴み、顔を近づけた。


 そのまま、躊躇もなく旬の唇が奈津美の唇に合わさった。


 わずかに開いた唇の隙間から、舌が差し込まれ、まるで人工呼吸するかのように大きく開かされる。


 奈津美の口の中に柔らかい塊が押し込まれる。甘苦くて、ほんのりコーヒーの味がする。


 これがチョコレートか。そんなにコーヒーの感じはしないのに、これでも旬はダメなのか。

 そう思っていると、旬が覆い被さるように下を向いた。


 自然と、奈津美は真上を向くような姿勢にさせられる。

 そしたら、奈津美の口内に、どろりとした生暖かい液体が流れ込んでくる。


 奈津美は驚いて目を見開いた。

 ちょっと……何……!?


 驚いたが、それが旬の唾液だということは、すぐに予想がついた。


 例えば、どうしても食べられない、嫌いなものを食べた時に、飲み込めなくて、そのまま口の中に残しておくと唾液だけは分泌されるが、それさえも飲み込めなくなる。


 そんな状態の旬の唾液が奈津美の口内に送り込まれているのだ。

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