ダメ男依存症候群 EXTRA

 ……負けちゃった。

 奈津美の心は屈してしまった。やっぱり、自分は押しに弱いのだと実感し、情けなく思えた。


「なあ、ナツ。あれもナツに似合いそう」

 旬が商品を指さして言う。


「あちらも合わせてみますかー?」

 店員が目をギラつかせている。あわよくば買わせるつもりだ。


「いっ……いえ! 今日はこれだけでいいです!」

 奈津美は流される前にはっきりと言った。


「えー。見ないの?」

 旬の方が残念がっている。


「うん! 今日はいいの!」

 旬の方には有無を言わせずにはっきりと言い放つ。


「じゃあこれだけ会計お願いしますね」

 店員にもそう言い、奈津美は着替える為にカーテンを閉めた。




「ありがとうございましたー」

 会計を済ませ、商品を受け取って、奈津美と旬は店を出た。


「ナツ、よかったの? ナツが好きそうな服いっぱいあったのに」

 旬が店の方を振り返りながら言った。


「いいの。余分なお金持ってきてないから」

 奈津美はそっけなく言って返した。


「そっか……」

 旬は急に元気をなくしてしまった。


「ちょっと、何で旬が落ち込んでんのよ?」


 そんなに奈津美に服を買ってほしかったということなのか。そうだとしたら、店員とグルなのかと思ってしまう。


「んー……オレが金持ちだったらさ、ナツにいっぱい服とか買ってやれるのにって、思って……」

 思いがけない言葉に、奈津美は目を丸くする。


「ごめんな。そういうのできないで」

 旬は本当に申し訳なさそうに言う。


 まるで子供のような発想だと、奈津美は思った。「金持ちだったら」という過程の仕方がそうだ。

 だけど、そんな旬に対して、奈津美は呆れたりすることはなかった。


「何で旬が謝るのよ。あたしは別に、旬にそんなことをして欲しくて一緒にいるんじゃないんだからね?」

 言ってから、奈津美は恥ずかしく思った。

 本当のことではあるが、滅多に言わないことだから、恥ずかしい。

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