ダメ男依存症候群 EXTRA

「何これ。何でこんなに買ってきたの?」

 ナツが目を丸くして言ってきた。

 そらそうだ。コンビニの店員も、カゴ一杯に入れてたから、ちょっとぎょっとしてたし。


「いやー。何か今日は飲みたい気分だったから」

 俺はなんとかそんな言い訳をする。

 本当は『飲ませたい気分』なんだけどさ。


「だからって……別にビールはうちにあるからいいのに……」


 知ってるよ。ナツんちには、だいたいいつも缶ビールが入ってる。

 でも、それは多くて三、四本。ナツを酔わすには全然足りない量だ。


「こんなに買ったらお金だってかかるし……無駄遣いしないでよ」


 確かに金はかかったよ。すでに今月ピンチ。

 だけどナツと俺のための投資だと思ったら、全然痛くない出費だ。


「大体、旬はまだ未成年なんだからこんなに飲んだら体に悪いでしょ」


 大丈夫。これ、ほとんどナツに飲ますための分だから。


 本当のことは何も言わずに、俺は曖昧に返事をした。

 ナツは「こんなにたくさん、冷蔵庫に入らないわよ」と、ため息をつきながら呆れてる様子だった。



 正直、これは何も知らないナツを騙すようなもんだ。

 俺の計画通りになったところで、ナツがベロベロに酔っ払ったら何も覚えてないだろうし。

 だから、少し胸が痛む。


 でも、これも俺達二人の快楽と可能性のためなんだよ。

 分かってくれるよな? ナツ。(って、実際に怖いから言えるわけないけど)



< 79 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop