ダメ男依存症候群 EXTRA
もしも旬が犬だったら
あたしは犬を飼っている。
「ただいまー」
仕事から帰ってきて、玄関を開けると、パタパタと足音が聞こえる。
「ワン」
一つ吠えると、あたしの目の前にお座りをして、じっとあたしのことを見上げてくる。
「ただいま、シュン」
あたしは体を屈めて、この犬の首を撫でてやった。
そうすると、クーンと鼻を鳴らし、気持ち良さそうに目を閉じる。
「お腹空いたね。今ご飯用意するからね」
「ワン!」
シュンは立ち上がって尻尾をぶんぶんと振った。
この犬、シュンは、飼い始めて一年になる、オスの雑種犬。
シュンは元々捨て犬だった。
雨が降って肌寒い日に、何故かコーポのエントランスの郵便受けの下に、ダンボール箱に入れられていた。
勿論、最初は飼うつもりなんてなかったけれど、あたしが郵便受けから郵便物を取って、その場を去ろうとした時「キューン」と切ない声で鳴いた。
そして、さらにとても悲しい目で見つめてくる。
当時はまだ子犬で、寒さでブルブルと震えていて、あたしはその場から離れなれなくなった。
でも、あたしは実家に居た時も何か動物を飼ったことなんてなかったし、犬とは言え、命を簡単に扱える自信なんてなかった。
だけど……目の前で震えているこの命を、見捨てることもし難かった。
結局、数分の間の見つめ合いにあたしは負けて、自分の部屋に連れて帰っていた。
あたしの住んでいるところは、ペット禁止というわけではなく、苦情が出ない程度ならいい、という、分かるような分からないような規則。
とりあえず、一年経つ今までは特に苦情もないから、大丈夫みたい。