嫉妬の威力
嫉妬の威力

梅雨が開けて爽やかな日曜日。

果乃(かの)は彼の車に乗って、海浜公園へ向かっていた。

特に社内恋愛に厳しくない我が社だけど、
皆が知っていようともやっぱり公にする人は少ないし、隠している人達もいる。

私たちもそう。

彼とはたまたま同じ課の二つ上の先輩真優
(まゆ)さんに誘われて行った飲み会で知り合った。

背はほどほどに高く子犬のような甘いマスクの彼は留学経験があって、物怖じせず人懐っこくて男女問わず周りに人が集まってくるタイプの人。

入社四年目で責任のある仕事をたくさん任されるようになっても、そのプレッシャーにやりがいを感じている姿はやっぱり素敵だと思うし、当然社内でもそれなりに人気があるのに。

どうして私なんだろう……

私は人目を引くほど美人ではないし、白雪姫なんて呼ばれている真優さんみたいな可憐な可愛らしさもないのに。

「ん?どした?」

ぼんやりネガティブ思考になっていると、赤信号で車を止めた彼に運転席から顔を覗き込まれた。

「私、来ても良かったのかな……」

今日は彼の同期主催のバーベキュー大会。

はじめは仲の良い同期とその彼氏彼女で10人程度のつもりが、いつの間にかその倍くらいの人が参加することになってしまい、会社のレクレーション大会的に当初より広い場所を借りて行うことにしたらしい。

「もう着くのに今更そんなこと?」

車が再びスタートして交差点を曲がると、緑の木々が並ぶ海浜公園が見えてきた。

「だって…」

私達の仲を知ってるのは彼の仲良し同期さん達だけだから、他の人たちがいるのにこうして一緒に行くこと事態どうなんだろうって思ってしまう。

「大丈夫だよ、果乃の同期も来るから安心
 しろ」

優しく頭をよしよしと撫でられた。

この安心をくれる手が大好きだ。

おまけに彼は私の面白味のないストレートの髪を好きだと誉めてくれるから、前より念入りに手入れをするようになった。

「そうなの?誰だろう…」

それじゃあ余計に上手く誤魔化さないと。

「俺が相手してやれない時は斎藤さんの傍に
 いればいい」

「なに言ってるの?英司(えいじ)くんがいた
 らダメでしょう。私なら平気だよ」

駐車場に車を止めた彼が『はあ?』っと目を細めて私を見た。

「な、なに?」

「それどういう意味だ?」

「どういうって……」

もちろん、私たちが付き合ってるってこと、
バレないようにしないとダメでしょう?

そう答えようとしたらフロントガラスをトントンと叩く音に続いて、秘書課の原園実穂
(はらぞのみほ)さんの笑顔のどアップが。

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