嫉妬の威力
トーナメント方式のペアマッチになった為に
運良く?!私と実穂さんペアは棄権して近くの木陰で見学していた。
「ねえ、北川のペアのあれ誰?」
「え?」
てっきり仲良し同期仲間の田辺さんか加瀬さんとペアかと思っていた私はその光景を見てドクッと胸に嫌な痛みを感じた。
英司くんの腕に親しげに腕を回してはしゃいでいるのは女の子。
「今年入社した企画部の新人亜稀(あき)ちゃ
んです……」
「はあーん、アレが里美の言ってたやつね」
彼女が英司くんを狙ってるらしいと、田辺さんの彼女で海外事業部の里美さんが教えてくれたのはつい先日のこと。
つい気になってどの子がそうか見に行ってしまったから、すぐにわかった。
「ずいぶんとあからさまね」
隣で実穂さんがふんって鼻を鳴らす。
「そう、……ですね」
嫌な気持ちを堪えて続けて見ていると、試合に勝った二人がハイタッチして喜んでいる。
英司くん楽しそう。
いつもお家でデートが多いけれどそれはインドアな私に合わせてくれてただけで、本当はこうやってアクティブに体を動かしたりする方が好きなのかも。
そう思ったら泣きそうになった。
負ければいいのに。
そんな私の黒い感情を悪魔が嘲笑うように
二人は順調に勝ち進んで決勝戦に。
「あっ」
亜稀ちゃんがサーブをミスして彼に謝ると、
彼がよしよしと頭を撫でた。
――やめて
「果乃ちゃん?」
――その手は私のなのに
「……何でもありません」
どす黒い感情を隠すように実穂さんに向かって無理矢理笑うと、いつの間にか隣に来ていた里美さんが私の肩に腕を回した。
「あの子元バレー部だってさ」
わぁーって歓声が上がって見ると、彼が決めたアタックが入り優勝した所だった。
亜稀ちゃんが飛び込むように彼に抱きついて喜んでいる。
……あんな嬉しそうな英司くん初めて見た。
「ちょっと!なにアレっ!」
走ってきた環(たまき)さんは腰に手を当てて自分の事のように怒っている。
その後に来た真優さんは、持ってきた冷たい缶ジュースを私の頬に当てた。
「北川くんには似合わない子よねー」
英司くんの仲間なのにみんなが私の味方で嬉しくて、でも黒い感情が消えてくれなくて心の中がぐちゃぐちゃになる。
「私の果乃ちゃん悲しませるなんて…」
「へっ?!」
「懲らしめてやる」
すくっと立ち上がった実穂さんに他の三人が
『そうねよねー』とか『北川くんのくせに』
とか『報いは受けるべきよ』って、大きく頷いた。
「み、みなさん何を……」