嫉妬の威力
「あっ」
加藤さんの肩越しの向こう、加瀬さんの隣で英司くんがこっちを見て睨んでいた。
その怖い顔に、咄嗟に顔を背けてしまう。
「あれ?なんかいい匂いする」
矢口さんが私の側でクンクンと匂いを嗅いだ。
「うん、俺も思ってた。寺本の髪だと思うん
だけどいい匂いするよな」
どうなってるの??
助けを求めて実穂さんを見ると、あの満面の笑みをされて再び身震いが……
「どれどれ」
加藤さんがサラッと私の髪をひとふさ持ち上げて匂いを嗅いだ。
「ホントだ」
加藤さんに耳元で甘く囁かれて軽く目眩がした。
眼鏡王子のお墨付きって、こうゆうことだったんですか!?
真優さんーー!!
「髪、サラサラで綺麗だね」
あっ、頭を撫でられる……
英司くん以外の人は嫌だなって
ぎゅっと瞳を閉じた瞬間、
背後から強い力に抱き寄せられた。
「気安く触んな!」
「えい……北川さんっ!」
英司くんと言いかけたのを慌てて言い直しても、彼は私を抱き締めたままで。
「これ俺のだから!」
えっ!と驚く周囲を無視して彼は私の手を引っ張るようにしてずんずん歩いて行く。
この時、実穂さんと加藤さんが拳を合わせていたのを私が知るのはずっと後のことだった。