通勤電車に咲く花は
結局、ハゲ親父はむっとしながらも女の子に席を譲った。ま、当たり前だけどな。はかなげなその女の子は、申し訳なさそうに謝りながら座った。こんな可憐な子にあのデブバカハゲ親父はなんてことを。
それよりも気になるのは、今、何故私は新聞男の腕の中にいるのか、だ。チビデブバカハゲ親父は意地でもその場所を動こうとせず、やむを得ず場所を作ってくれた新聞男の前に立ったのだが。混んだ電車では座席の前に立つ人は吊革には掴まれない。網棚の前の棒に掴まるのがやっとだ。その後ろに立つ人が吊革に掴まるのがいつも見る風景だ。が、何故君は両手で網棚の棒を掴まっているのかね?
「‥あの」
「朝は混んでますね。」
にっこり。
「はぁ‥。」
なんだこれ。
おい、顎をあたしの頭に乗せるな。

そのまま、電車は無事会社の最寄駅に着いた。
「あの、私、ここで降りますので。」
「あぁ、いってらっしゃい。」
「‥いってきます。」
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