通勤電車に咲く花は
そんな微妙な空気で1か月。
その日、乗ってた電車に石がぶつけられたとかで、車両故障で途中駅止まりになってしまった。
誰だよ。朝から余計なことするなよ。ここから乗り換えたら、絶対座れない。
絶対混んでる。ぎゅうぎゅう詰めの電車は大嫌いだ。
内心毒づきながら電車を降りると、新聞男がニコニコと纏わりついてきた。
「朝から嫌ですねぇ。」
ちっとも嫌そうじゃないな。
「はぁ。」
「あ、でも、こうして2人で並んで電車待つの、嬉しいな。」
「‥。」
「よかったら、今度、食事でも行きませんか?」
何故今このタイミングで聞く?
「僕ね、和食が好きです。」
うん。かなりの割合で、日本人は和食が好きだよね。
「そうだなぁ。明日は金曜日だし、どうですか?あ、携帯、貸してください。」
断る。
うろんげな目つきで新聞男をみやると、携帯片手にニコニコしてやがる。
「‥携帯持ってません。」
「えっ?!嘘!」
嘘です。あたしだって21世紀に生きている人間だ。携帯くらい持ってる。
ってか、最新式のスマートフォンについ最近買い換えた。
でもあんたに貸す携帯はないから、全くの嘘ではない。
「ええと‥。」
困る新聞男。いいぞ。そのまま困ってろ。黙ってろ。悩んでろ。そしてあたしの前から消えてしまえばいい。
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