不条理な恋でも…【完】
ほのかはソファーに寄りかかったままうつ伏せで眠っていた…

スカートが少しはだけ太ももが目に入りドキッとした俺は、

おもむろにスーツを脱いでその足元に掛けた。

春らしいワンピースを着て、右手にリモコンを持って何をしていたのだろうか?

俺はカノジョの隣に腰を下ろして、その姿を微笑みながら見つめていた。

今朝、部下に頼んで婚姻届を役所に出してもらったから…

君はもう俺の妻。

無邪気に眠る姿は聖女のようで、それ以上触れることがためらわれた。



「フゥ~」

俺は息を吐きながら嘲笑するしかなかった。

こんなに女慣れしているはずの俺が、ことほのかに関しては

全くのダメダメな奥手になってしまうなんて…

出会ってから10年以上の月日が流れた…


2年ほど前にプロポーズを断られてから、

静かに抱きしめたり、頬やおでこにくちづけるくらいはできるようになったけど…

情けないことに唇にキスすらしたことがない。

今までの自分の所業を考えると、ただただ笑うしかなかった。


ほのかとは今夜が何もかも初めてなのだから…

楽しみというよりは、本当にできるのだろうか?してもいいのだろうか

という気持ちの方が大きい。そして何より君を決して傷つけたくない…
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