不条理な恋でも…【完】
わがままな自分と、些細な事に幸せを感じることのできる自分。

ここまでたどりつく俺の人生は、欲しいものが手に入らない…

我慢と辛抱と待つことの連続だった。


そんなことを思いながら、撫でていたほのかの髪を一房指に絡めた。

一瞬だけ絡まったはずの綺麗な髪が、はらはらと落ちる。

ふと、その美しい髪を掴んで、俺の見たことのない白いであろううなじに

口づけたくなった。


それを想像しただけで、治まりかけていた心臓の鼓動がまた早まり始める。

もうここしばらく温かい躰を抱いていないのだろうか?

ほのかと一緒に住み始めて、彼女と連絡を絶ってから

夜の街にフラフラ彷徨うこともせずに…


でも、欲しいのは躰じゃないはずだ。

想いの伴わない躰の交わりの虚しさは嫌という程思い知らされてきた。

それはただ、醜いものを吐き出す義務に過ぎない。

でも辞めることのできない、弱い自分に以前は辟易した。


愛おしいと思い思われるからこそ得られる快感があること。

それを教えてくれた彼女を、結局俺は長年の執念のような自分の想いを貫くためだけに…

捨てた。


今夜俺はそれを君と手にできるのだろうか?

俺にはその資格があるのだろうか?

いつか、いつかこの世の別れの時に、俺は満足しているのだろうか?
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