不条理な恋でも…【完】
お風呂に大きなリビング、次に開けたドアの向こうはベッドルームだった。

大きなクイーンサイズのベッドを見て変な緊張感に包まれた…

私はあわててドアを閉め、リビングにある大きなソファーに座り、

リモコンを探してテレビの電源を付けた。

こういう時ってどうしたらいいんだろう…

シャワーを浴びてもいいのかなぁ~。

それじゃ、まるで誘っているみたいではしたない?

でも、すっきりするなら少し湯船につかるのはリラックスできるけど…

今夜、私はあのベッドで大希さんと…

そう思うと目の前のTVの内容は全く頭に入ってこなかった。


意識してしまうと、変な汗が出てきて緊張感が私の躰の全体を包んだ。

そういうことは初めてじゃない。

以前1度だけ…

たった1度だけだけど、私は眞人に抱かれた。

あの時の記憶を彼が失踪後、鮮明に自分の中に留めようと躍起になったが、

失踪宣告を受けるほどの長い月日の流れに…

あの愛おしい感触は暗闇に飲み込まれていった。

今は断片的な記憶と事実の羅列でしか残っていない。

男性恐怖症にもなってしまい…

今はずいぶん大丈夫になったとはいえ、

どこまで大丈夫なのかは確かめていないのでわからない。
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