不条理な恋でも…【完】
気怠い気持ちで瞼を持ち上げると、目の前にソファーの生地が見えた。

耳には何かの音が流れているのが聞こえた。それはテレビだった。

私はいつの間にか眠っていたらしい。

眠い目をこすりながら体を起こすと、足元に掛かっていたスーツが床に落ちた。

慌ててそれに手を伸ばそうとすると、

隣に座っている微笑んだ大希さんと目が合う…

彼はすべてが終わって、部屋に戻ってきていたのだ。


「大希さん…」

「すまない。俺のせいで色々と気を使ったから疲れただろう?」

「大丈夫だよ。これ、ありがとう」

私はスーツを持ち上げ大希さんに向かって微笑んだ。

「無理するな。そんなこと大したことじゃないから。

それよりお前のダイジョウブはあてにならない…

大丈夫じゃない時でも大丈夫って言うだろう?」

「今日は本当に大丈夫だよ…

しわになるからかけとくね」

私はスーツを持ったまま彼の隣から立ち上がって、

部屋の端のポールにあったハンガーにかけた。


彼に背を向けたままどうしようかと戸惑う自分がいる。

ここは大希さんと二人っきり。今までもそういうことはたくさんあった。

でも夫婦としては初めてで…

これからどうしよう…

このまま大希さんの隣に戻って座るのが恥ずかしい…

私の心も身体もまだまだその時の覚悟ができていなかった。
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