不条理な恋でも…【完】
じりじり…(大希)
ほのかが、俺のスーツを手に持ってあっちに行ってしまった…

今の今まで傍らにあった温もりが離れていく…

背中を向けるほのかの手をつい引いてしまいそうになった。

長い髪が、俺の鼻先をかすめてすり抜けていく…

焦るな。まだこれからだろう…

ここまで待ったんだ。今更もう少し位、待てないでどうするんだ?

1日は長い。これからもう少しゆっくりしてからどこかで食事をして、

シャワーを浴びて、一緒に眠る。


今までもあの事件からしばらくは、一人で眠ることをほのかが異常に恐れ、

カノジョの眠るベットの傍らに簡易ベッドを持ち込んで、同じ部屋に眠った。

でもさすがの俺も、泣いて取り乱す彼女を抱きしめるとき以外…

同じベッドに入ったことはなかった。無論共に眠ることなどあり得ない。

俺だって、そこまで自制心が強いわけではなかったから…


俺のスーツを掛け、背中を向けたまま立ち尽くし、

その横のドアを開け拒絶するようにピシャっと閉め、消えてしまったほのか…


俺がカノジョを疲れさせる元凶なのかもしれない…

今回だって仕方がないとはいえ、本人も納得のこととはいえども…

そう思うと切なかった。

明らかにほのかは疲れている。これ以上カノジョにストレスをかけたくない。

でも俺にだって我慢には限界はある…





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