不条理な恋でも…【完】
「ほのか、こっちを向いて?」

甘く低い声…

それは今まで聞いたことのない響きだった。

私はその言葉にドキドキが止まらなくなった。


「ねえ、こっちを向いて」

大希さんが私との間に少しすきまを開けたかと思うと頬に両掌が伸びてきて、

ゆっくりと彼の方に顔を向けられた。

私は視線を合わすこともできなくって顔がますます火照ってくる。


「かわいいな。そういう所も…」


私のどこが可愛いのだろう…

ゆっくりと近づく熱にどうしたらいいの?唇にキスされるのだろうか…


誓いのキスは、ほんの一瞬でちょっとだけ唇に触れる

羽のような優しいキスだった。

大希さんは頬やその他の場所にキスすることはあっても…

『その時まで大事に取っておくんだ…』

と言ったその通りに、実はあれが大希さんと初めて交わすくちづけ。


ドキドキしながら唇をきゅっと引き結ぶと、

やさしい唇はおでこに降ってきた。


チュッという音と共に熱が遠のき私の心臓がバクンと跳ねた。

跳ねた心臓にびっくりして思わずぎゅっと目を閉じた。


頬に触れていた左手が離れたかと思ったら

大希さんの方に引き寄せられた。

私はもう何が起こったのかわからないまま、ただ大希さんに身を任せた。

唇が触れて、ふわっと抱きしめられる。

大希さんもドキドキしてくれているようで、うれしかった。
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