青春を取り戻せ!
何故なら、憎むべき白木夫婦は僕が12年の刑に服していると思っている。12年後は当然報復に備えることが考えられるからだ。

…出所してからの5年間が勝負だと思えた。

僕は親友の柳沢に思い切って、今まで聞かれても言わなかった投獄の秘密と、復讐計画を相談した。彼なら信用できると判断したからだ。

柳沢は、君は命の恩人だし、俺の正義の詐欺師としての血も燃える。
代償は別だが、全面的に協力する、と約束してくれた。

それから、そのための綿密な計画が毎晩練られた。

作戦上、敵の現在を詳しく知る必要と、復讐の実行に敵の懐(ふところ)に潜り込んでいる人間が必要になった。

僕には信頼できる人間は優紀しかいなかったので、それを彼女にお願いした。

未美は遠くから一度チラッと優紀を見たことがあったかもしれないが、通行人の一人ほども気にかける存在ではなかったはずで、それにその当時は優紀は十二、三才の子供だった。覚えているわけはなかった。

優紀の人生を左右する大事なことを頼める筋相ではなかったが、僕は最終的には彼女の面倒はみるつもりだし、白木夫婦への復讐のためならいくらでも非情になれた。

…例え必要なら、自分の腕を切り落とすことも眉一つ動かさずにできるだろう。

優紀は、私もあなたと同じように白木夫婦を世の中から消したいほど憎んでいる。それに、同じ製薬会社だし、どこで働いても抵抗はないわ、と言ってくれた。

次の手紙に、ちょうど白木の生体科学製薬で女の事務員を募集していたので応募をしておきました。
あなたのアドバイス通り、住所は隣町の親戚のものを使いました。
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