青春を取り戻せ!

とりあえず数に変化がないと考え、６百万人の患者がこれを使うとして、薬価は推測ですが、同じようなプラチナを使った抗癌剤があります。これは５０ｍｇで２７０００円します。ご存知ですよね？」

「はい。それは知ってます」

「この薬も薬価集載される時は同額か、それ以上になると思われます。そしてこの薬の投薬法は、１クールを一週間の連続投与。そして、その後の一週間を休薬期間に当てるというように使われると考えられますから、普通５クール行うとして、６百万人に２７０００円を掛けて更に３５を掛けると全体の使用金額が出てきます」

「えーと。…５兆６千７百億円になりますか」

「さすが社長だけあって計算にお強い。だから、４０億円の権利金なぞゼロに等しいのです」

「しかしリスクも考えられる。この薬を製品化するまでの４、５年の間に、それ以上に有効で副作用のない薬が開発された場合は丸損ということも考えられるでしょう？」

「その通りです。しかし４０億円ぐらいは５千人の人に使えばペイしてしまいます。たぶん丸損はないでしょう。ハッハハ…」

と、柳沢は笑った後に、「コホン！コホン！」と咳払いした。

助教授役の僕はタイミングよく永いトイレから戻った。

「私がいないと随分楽しそうだね？」

実は、この“コホン！”が戻って来いという合図だったのだ。

「またぁ先生は！私をいじめるのを生き甲斐にしてるんでしょう？ハッハハ…」

後半のハーフになると、セールスマン役の柳沢以上に、白木夫妻は慇懃（いんぎん）に“ヨイショ”をはじめた。