青春を取り戻せ!
そして、いつのまにか名刺交換も行っていた。


水島高嗣助教授は勿論実在の人物で、僕の以前勤めていた大学の研究室の講師をしていた人である。
ボンをくれたのも彼だった。
変わり者の教授と折合いが悪く、助教授昇格の話に乗って今の城南大学に移ったのであった。

僕は彼に獄中から優紀を通して長い手紙を書いていた。彼は当時から僕を可愛がってくれていて、僕が殺人犯でないことを信じてくれただけではなく、深く同情してくれた。
そして、今回の不躾(ぶしつけ)な願いも聞いてくれ、白木からの電話にも対応してくれることになっていた。


3日後、白木から水島助教授に直接連絡があった。

その内容はディナーの誘いだった。

助教授は、大学に迎えに来ると言う申しでを断り、直接現場に行くと対応したという。

僕はこの判断の正しさとご協力に礼を言った。
白木には、水島が実際城南大学のウィルス学の助教授であるのかをこの電話で確認する意味もあったと思う。…これで想像するに、彼の不安は霧が飛ぶように晴れたと思われた。

僕は丹念に変装をすると日比谷に向かった。
5分前に着くと、すでに彼は来ていた。一人だった。

…良かった。未美が一緒だと二倍気を使うことは明らかだったからだ。

彼はまるで本物の中国人のような発音で次々と料理を注文した。

丸いターンテーブルに次から次へと中華料理が出された。

彼は、ここのは美味いでしょう、と自分のことのように自慢した。
確かに美味かった。材料が新鮮な為だろう。
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