青春を取り戻せ!
「…私がお嫌いなのね」

「そんなことはないよ」

「じゃ、好き?」

水商売独特の三段論法を使ってきた。男とは根本的に優しい動物なので、この三段論法から逃れるのはよほどの決心がいる。

しかも、さっきから怒張しているものが、優紀との時にはどうして駄目なんだと、軟弱で不可解なハートを責めるように下から痛いほど突き上げていた。

「好きだけど、勘弁して、どうしても出来ないんだ」

「えっ!?…私が出来るようにしてあげる」

何か彼女は勘違いをしているようだった。しかし、それを訂正することは僕のプライドを保つだけだし、それを実証することは白木に多少なりとも恩を感じることになる。それにプライドなどというものはとっくに監獄に捨ててきていた。

…不思議に苦しかった監獄と憎い白木夫婦のことを考えると、脳も下半身も冷却していくのを感じた。

僕はスーツから財布を取ると、三枚を彼女の前に置いた。

「これ取っておいて」

「もうお金はいただいてます」

「そんなこと言わないで」

「いいえ。私が怒られます」

僕は彼女の勘違いを利用しようと考えた。

「これは僕が不能だということを白木君に黙っていてもらう、口止め料だよ」


二日後に白木から電話がきた。

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